1055人が本棚に入れています
本棚に追加
竜は由貴に携帯を返すと、視線を下げたまま黙り込んでしまった。さすがの竜もこの状況に狼狽しているようだ。
由貴は携帯を元の場所に戻すと、ゴクリと唾を飲み込んでから、口を開いた。
「……七不思議のまんまじゃん」
「は?」
竜が由貴の言葉に視線を上げると、由貴は真っ直ぐ竜を見て、話を続けた。
「七不思議に、4時44分に学校が違う場所に繋がるってヤツがあんだよ……マジだったんだ」
なんでよりにもよってこれに遭遇すんだよ、と由貴は呟くと、右手で髪をガシガシとかき混ぜた。竜は由貴の話を黙って聞いた後、右手を口元に当てて、由貴に話しかけた。
「なあ、由貴」
「なんだよ」
「その七不思議ってヤツ……図書室にも一つ話ねえ?」
「図書室? ……ああ、確か、イジメられて自殺した女子生徒が出るってのは聞いたかも、詳しくは知らねえけど」
「…………」
「竜? それがどうかした?」
由貴が視線を下げて黙り込んだ竜に声をかけると、竜はゆっくりと視線を上げて、口を開いた。
「ソイツ、多分俺、会ったわ」
「え! マ、マジで?」
「信じたくはねえけどな」
非科学的な事を信じていない竜ではあったが、流石に今の状況では七不思議の存在とやらを認めざるを得なかった。由貴は竜の言葉に目を丸くさせると、ジッと竜を見た。
「……てかさ、これから俺ら、どうなんの? ずっと、このまんま?」
「……バカな事言ってんじゃねえよ」
「竜……」
由貴の珍しく弱気な声に竜は、鋭い視線を由貴に向けると、ハッキリとした声で、こう続けた。
「七不思議だかなんだか知らねえけど、誰がこんなとこに大人しく閉じ込められてやるかよ」
竜の言葉に由貴もそれまで自信無さげというか戸惑いを見せていた表情を、引っ込めた。
「……ですよね」
最初のコメントを投稿しよう!