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「で、これからどーすんの?」
一端歩くことを止めた二人は、廊下の真ん中に立ち止まったまま辺りを見渡した。辺りは見えるもの全て見慣れた姿をしているのに、人影一つ無く、薄暗いその様子は初めて来た場所のように錯覚させる。
由貴が、きょろきょろと周辺を見渡しながら竜に話しかけると、竜は視線を由貴に向けて口を開いた。
「とりあえず教室目指しても意味ねえし……降りられるとこまで降りてみるか」
「降りられるとこまで? どういうこと?」
由貴が竜の言葉に首を傾げると、竜は階段のある廊下の端へ向かうべく、足を進めながら話を続けた。由貴はその後を追う。
「一階に行けば、玄関から出られるかもしんねーだろ」
「なーるほど。まあね、グルグル同じ道歩いててもしゃーねえし」
由貴は竜の返事に頷きつつ、横に並ぶと辺りの様子を伺いながら、足を進めた。一年の教室がずらりと並ぶ廊下を二人分の足音が響く。一度は取り乱した由貴であったが、やけに冷静な竜の態度に落ち着きを取り戻していた。
「ねー、竜ちん」
「なんだよ」
「あの時間に残ってたからー、こんな目に遭ってるわけっしょ? だったら俺ら以外にも同じ目に遭ってるヤツって結構いんじゃねえ? 他のクラスにも残ってるヤツいたし」
「さあな」
「でもなー、誰にも会わねえし。ミンナおんなじよーにおんなじ道グルってんのかねえ」
「つうか、今、この状況で会った方が気味悪いだろ」
「確かに!」
二人は普段とは違う雰囲気を纏った廊下を出来る限り普段と同じような軽口を叩きながら歩いた。冷静さを欠けば、そこで終わりのような気がしていたからであろうか。
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