ニガサナイ

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 由貴の叫び声が辺りに響く。竜はそのうるささに右手で耳を覆って、うるせえよ、と眉を顰めながら吐き捨てた。 「うるさくもなりますよ! いくら降りても一階に着かねえし! 何この終わりなき旅!?」 「ギャーギャー騒ぐな」 「いて!」  竜はまたもや騒ぎ出した由貴の後頭部を今度は強めに叩くと、階段の踊場に足を下ろして、次の階を見下ろした。  学校という場所ゆえに変わり映えのしない風景。一体そこが何階なのか判断することが出来ない。  竜は溜め息をつくと、右手で髪をかき混ぜて、視線をまだ地味に痛がっている由貴に向けた。 「とりあえず、次の階で降りんのやめるか」 「いてて……そうっすね。いくら降りてもキリがねえし」  由貴が竜の言葉に叩かれた頭を撫でながら頷くと、二人は階段を降りて行った。  廊下に足をつけて、辺りを見渡すと、そこは今までぐるぐると回っていた図書室から二年A組の道ではなく、職員室へと続く廊下であった。  由貴は、やっと少しは違う場所に出れたと、ホッと息を吐いたが、竜は相変わらずの無表情で辺りを警戒するように視線を這わせていた。  由貴と竜の二人は、薄暗く誰もいない廊下を歩み始める。暗闇というよりも青白い、と言ったほうが適切であろうか。  辺りを見渡しながら、なんとかここから脱出出来きまいか、と足りない頭を必死に働かせて考えていた由貴に、それまで黙っていた竜が口を開いた。
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