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竜と由貴の二人は並んで廊下を歩きながら、下校するべく下駄箱を目指した。その途中、人当たりのいい由貴は、すれ違う知り合いや友人に声をかけていた。
賑やかな廊下。補習があるといっても、まだ夏休みの期間。この補習期間が終われば、一週間の連休が待っている。
補習終わりに何をしようかと計画を練っている生徒達は、こんな場所に長くいてたまるか、といった様子で次々に校舎から出て行こうとしていた。
大して急ぐわけもなく、ゆったりとした足取りで下駄箱に到着した竜と由貴は、上履きからスニーカーに履き替えるために、それぞれ自分の靴がある場所に立った。
周りには数人の生徒達が賑やかに話しながら、上履きから自分の靴に履き替え、その場から立ち去っている。
竜が自分のスニーカーをやや乱雑に下に置き、そこに足を入れていると、すでに履き終えた由貴が下駄箱にもたれながら竜に話しかけてきた。
半袖のカッターシャツからはいくらか焼けた腕が見え、それとは対照的に長袖を着て、腕捲りをしている竜の腕はまだ白いままであった。
「ねえ、竜ちん」
「なんだよ」
「七不思議の話、知ってる?」
由貴の言葉に竜は、またそれか、とうんざりした表情を浮かべた。夏という季節のせいであろうか。七不思議という怪談はどのクラスでも一番の話題のネタであった。
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