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「桜の木がどうとかってヤツだろ」
「あら? 知ってんの? 竜ちんってそういうの興味無さそーだし、知らねえと思ったんだけど」
「健太が言ってたんだよ」
自分から興味を持って知ったわけじゃない、と竜は言外にほのめかすと、スニーカーを履き終えて、鞄を肩にかけ直し、足を進めた。由貴は、ふーん、と相槌を打つとその後をついて行った。
正門までの道を並んで歩く。周りには多くの生徒達が歩いている。三年生は午後も補習が残っているから、今、この場所を歩いているのは一年生と二年生のみ。
由貴は視線を辺りに巡らせた後、口を開いた。
「桜の木の話も聞いたけどさー、俺が聞いたのはそれだけじゃねえんだって」
由貴の言葉に、竜は由貴を一瞥して、興味無さそうな表情を浮かべた。桜の木の話だろうが、それ以外だろうがどうでもいい。竜の顔には、そう書いてあった。しかし、由貴はそんなこと構わずに話を進める。
「うちのクラスのヤツが実際に体験したらしくってさー。ね、ね、知りたくね? 知りたいよね?」
「別に知りたくねえよ。どうでもいい」
にんまり、と笑ってからかうように言ってくる由貴に竜は、心底面倒くさそうな表情を浮かべる。由貴は竜の言葉に、ニタアッと笑うと、右手の人差し指で、ぷに、と竜の頬を突いた。
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