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『でっけえ。』
甲羅は30㎝もある。
イシガメだ。この辺には、イシガメとクサガメがいる。多いのはイシガメだ。
水中メガネにヤス(モリ)を持ち、アユや魚を突く。それが毎日の遊びだった。もちろん捕れた魚は夕飯の食卓に並んだ。
そんな時、カメを見つけるとある儀式があった。
カメを裏返し、腹の部分を見るのだ。
そこには『名前』が刻まれている。その大きなカメにはかなり昔に彫られた『としぞう』と言う文字があった。
『としぞう』そんなダサイ名前は近所の子供にはいない。お父さんの知り合いにもいない。多分何十年も前のお爺さんの世代だろう。
そう。うちの地域のカメは野性で伸び伸び暮らしている。しかしちゃんと飼い主がいるのだ。
新しいカメを最初に見付けた者がその権利を持つ。
捕まえたカメは家に持ち帰り、釘やキリで名前を書く。かなり深く書かないと消えてしまい、誰かに横取りされることがある。
カメはを捕まえるのは夏の間の素潜り漁に限られる。夏のカメは動きが早くなかなか捕まらない。だからひと夏に一匹自分のカメが増えたら上出来だ。
しかしゆうちゃんは凄い秘策を見付けることになる。
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