カメ

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冬の遊びは限られる。 たんぼで野球をやることが多かった。 ホームランがみんなの頭上を越えて、川沿いの竹やぶに入った。もう少しで川に落ちそうだ。 ボールを取ろうとすると足の下の地面はバネでも入っているかのように揺れた。 『なんだこれは』 訳が分からず身を乗り出して覗き込んだ。 そこは竹の根がびっしりと絡み合い、下の土だけが川の流れに削られ、中は深い天然の洞窟になっていた。 髪を濡らしながら奥を覗き込む。 『カメだ』 それも何十匹というカメが冬眠している。 嬉しくなった。 これでカメの捕獲には困らない。誰にも内緒にして、その日は家に帰った。
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