月がちょうど満月だった。

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別れを告げるなら外だ。 なぜか前からそうおもっていたので、彼氏を外へ連れ出そうと、 「月がちょうど真上だから、月見ながら、散歩がてら行こう」と誘った。 それを聞いた彼氏はその日やっと微笑し 「おまえはいつも自然を理由に動くんだよな、花が綺麗だからドライブにいこうとか、夕日が綺麗だから窓の空いたレストランにいこうとか。」と言い、そんな私が好きだ、と髪をぐしゃぐしゃとなぜた。 外へ出ると汚い用水路のような小さな川沿いを歩いて、居酒屋をめざす。 月は穏やかにひかり、薄い雲がゆるやかにかかって、なにもかもがゆっくりと動いていた。 まるでけんかの後のようなしんとした雰囲気で、手をつないで眺めた。 もう二度とない。そう確信しながら。
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