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隠すわけでもなく、桜並木は言った。
もしかすると…長年たまっていた思いを、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
でも…。
「春が…嫌いって。
桜の精なのに」
私は桜並木の言葉に疑問を感じて、少し戸惑いながら言う。
それに桜並木は、はっきりと答えた。
「嫌い。
桜が咲くから。
…俺は、独りだから」
桜の精だから、俺は。
少し淋しそうに笑ってから、桜並木は視線を下に向ける。
春が来たらここに来なきゃいけない。
春の間、独りで何をするわけでもなく。
「俺は、孤独だ」
桜並木は、小さく呟く。
その声にはどこか哀愁があった。
「独りで、淋しいんだね」
私は桜並木の心の中を思って、ぎゅっと拳を握り締める。
瞳に、熱いものを感じた。
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