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「独りは、淋しい。 だから…春も桜も嫌い」 桜並木は、まるでそれが枷であるかのように言う。 事実、それは桜並木の枷だ。 ――――春が、桜があるから 桜並木は縛り付けられている。 それに何故か、例えようがないほどの痛みを感じた。 「私がいるよ、桜並木」 気付けば、私の口からは言葉が溢れていて。 その言葉に。 気持ちに。 自分でも驚いた。 その時ならまだ “冗談だよ” そう言うことは出来たはずだった。 でも。 その言葉は、まるで支え棒をされたかのように、出てくる気配をみせない。 そう――――何故か、桜並木と一緒にいることが、とても自然に思えたから。 「私が、いるから」 私はその言葉を口に出しながら、にっこりと笑った。
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