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その顔を、穴があくんじゃないかって程に凝視していた桜並木は、微かに震えている唇を ゆっくりと開いていく。
「本当に…?」
その唇から出た声は、しかし半信半疑の響きをもっていて。
その事実に何故か打ちのめされつつも、私はしっかりと頷いた。
「いる」
「春の間、…ずっと?」
それに、直ぐ様桜並木が質問を投げ掛けてくる。
痛いぐらいに真剣で、でもとても澄んでいる桜色の瞳が、私の目を捉えた。
そのまま、私はその桜色の瞳から目を離さずに
「いるよ、桜並木。
約束する」
しっかりと、その目を見返した。
―――その瞬間。
「…っ」
ポロリ、と。
桜並木の目から、真珠のように綺麗な涙がこぼれ落ちた。
そのまま…まるで桜から花びらが散っていくように、桜並木の瞳からは 次から次へと涙が溢れ出す。
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