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次の瞬間。
さっきまでいた、閑で清浄な空間とは裏腹に
クラクションや人のざわめき
…喧騒が溢れかえる。
それらは私の五感を、痛いぐらいに刺激した。
しかし、その感覚は。
目の前にある物を見た瞬間、視覚を除いた全てが麻痺する。
信じられなかった。
目の前の事実が、のみこめなかった。
「さ…くら並、木…?」
震える唇が、それだけを口にする。
それ以上は…言葉にならなかった。
私の目の前にあった桜が…桜並木の宿っている桜が
───見るも無惨な姿になっていた
車が幹に衝突したらしく、木は、幹の半分から真っ二つに折れている。
それが車の上に乗り、綺麗に咲いていた桜は、地面に散っていた。
それが、まるで桜並木の流した血のようで。
───目眩がした。
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