9/10
前へ
/16ページ
次へ
次の瞬間。 さっきまでいた、閑で清浄な空間とは裏腹に クラクションや人のざわめき …喧騒が溢れかえる。 それらは私の五感を、痛いぐらいに刺激した。 しかし、その感覚は。 目の前にある物を見た瞬間、視覚を除いた全てが麻痺する。 信じられなかった。 目の前の事実が、のみこめなかった。 「さ…くら並、木…?」 震える唇が、それだけを口にする。 それ以上は…言葉にならなかった。 私の目の前にあった桜が…桜並木の宿っている桜が ───見るも無惨な姿になっていた 車が幹に衝突したらしく、木は、幹の半分から真っ二つに折れている。 それが車の上に乗り、綺麗に咲いていた桜は、地面に散っていた。 それが、まるで桜並木の流した血のようで。 ───目眩がした。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加