11人が本棚に入れています
本棚に追加
「春が…嫌いだから。
桜を、見たくないから」
「ずーっと見上げてるの?」
私の訝しげな問いにも、桜並木は小さく首を縦に振る。
「ずっと」
そのまま、迷いもなく答えた。
「転ばないの?」
私はその言葉に桜並木が心配になり、思わずといった風に尋ねる。
その言葉に、桜並木は驚いたように私を見てくる。
それが、桜並木が初めて私を見た瞬間だった。
あ…やっぱり綺麗な色の瞳。
私は、桜色の瞳に見惚れる。
「名前は?」
暫くそうしていると、桜並木が 唐突に私に名前を尋ねてくる。
その、吸い込まれるような桜色の瞳に翻弄されるような感覚に陥って、私は小さく
「春…」
とだけ呟く。
その言葉に、桜並木はふわっと微笑んだ。
最初のコメントを投稿しよう!