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「春が…嫌いだから。 桜を、見たくないから」 「ずーっと見上げてるの?」 私の訝しげな問いにも、桜並木は小さく首を縦に振る。 「ずっと」 そのまま、迷いもなく答えた。 「転ばないの?」 私はその言葉に桜並木が心配になり、思わずといった風に尋ねる。 その言葉に、桜並木は驚いたように私を見てくる。 それが、桜並木が初めて私を見た瞬間だった。 あ…やっぱり綺麗な色の瞳。 私は、桜色の瞳に見惚れる。 「名前は?」 暫くそうしていると、桜並木が 唐突に私に名前を尋ねてくる。 その、吸い込まれるような桜色の瞳に翻弄されるような感覚に陥って、私は小さく 「春…」 とだけ呟く。 その言葉に、桜並木はふわっと微笑んだ。
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