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「春…春は嫌い。
でも、春は、気に入った」
そのまま、桜色の瞳で真っ直ぐに見つめられて、私は真っ赤になる。
でもそれを気にした風もなく、桜並木はふわりと笑ってから言葉を紡ぐ。
「明日も、来て。
…待ってる」
そう言って―――消えた。
私はそれに、思わずその場にへたりこむ。
「ゆっ…幽霊?
ど、どうりで…顔が青白っ…」
今更ながらに、桜並木の顔が青白いといっていい程に白かったのが思い浮かび、私はへたりこんだまま、桜並木と同じように空を見上げる。
どうしよう…そう思った。
その時は。
「幽霊に…気に入られちゃったよ、私」
遠くでチャイムの音がしたけれど。
どうしても行く気にはなれなくて、私は座り込んだまま呆然とチャイムを聞き続けた。
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