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雨の香港スーパードライな小姐
「この時期雨なんて降らないのに。」
K夫人が不満そうにいった。
「これじゃビクトリアピークに登れやしない。」
タクシーの窓から見上げる対岸の香港島も山頂部は霧と雲の中にかくれている。あの有名な金融街の超高層ビル群も上部は霧の中だった。ビクトリアピークに登ったところで何も見えるわけがない。
夕方の渋滞の中、タクシーはアクセルとブレーキの連続でわたしは少し酔い気味だ。
それは数時間前からの香港到着時からの続きだった。
あれはヒドかった。
成田からJALに乗った。行き届き過ぎたサービスが不快だった。いちいち床に膝をつくなよネーちゃん。いやスッチー。
それ以上に不快だったのは着陸時だ。
乾期の香港に雨が降る。それもただならぬ雨だ。
雨雲の中を通り抜ける時、スチュワーデス(今は洒落てフライトアテンダントというらしい)に着席命令が出て、我々乗客には機長からの説明が日本語と英語でなされた。
つまりは、危険だから場合によっては香港空港には着陸しない、という事だ。
とにかく、機体は雨雲に突っ込んだ。
機体は四層の雨雲を通り抜ける間中ガクガクと揺れ、蛇行し、翼はよじれ、フラップは絶えず動き続けた。
なんでわたしがフラップの動きを知っているかって?
それはわたしが右舷の主翼すぐ後ろの席の窓際に座っていたからだ。
あまりの揺れにわたしは空エズキを二発。もう少しで本当にモドスところだった。
それから数時間。
タクシーの中はK夫妻とわたし達姉妹でいっぱいになり、九龍(カオルーン)半島の油麻地(ヤウマティ)から香港島の銅鑼湾(コーズウェイベイ)に向かっているところだ。
九龍半島と香港島を結ぶ海底トンネルは最近一本増えて三本になった、というが夕方の渋滞は改善された兆しはなかった。
銅鑼湾の海鮮料理店を予約してくれたのは香港在住のK夫妻だ。
店はとても混んでいた。
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