0人が本棚に入れています
本棚に追加
男はバイクをガレージにしまうとそのまま部屋へ上がっていった。
「雪いい加減説明してくれる?」
少女の言葉を無視すると男はグイッと少女の腕を引っ張った。必然的に少女は男の胸に倒れ込む。慌てて退こうとした少女を抱きしめ男は静かに言った。
『無理するな。』
「っ無理なんか…」
『馬鹿。何年一緒にいると思ってる。俺には分かるんだよ。いいから泣いちまえ。今なら俺しかいない。』
「…でも」
さらに少女を強く抱きしめ男は言う。
『これなら見えない。いい加減スッキリしろ。』
男の優しさに触れ少女はとうとう泣き出した。その声は男の胸に吸い込まれ部屋に響くことなく消えていった。
何時間たっただろうか。少女は泣きつかれて男に凭れながら眠っていた。
少女をベッドへ移すと髪を撫で優しく涙の跡を舐めとった。
(君を彩る様相は俺が全部守ってあげる。君が悲しむ全ての様相は俺が壊すから。だから、ほんの少しでいいから、俺に君の愛を下さい。それだけで俺は満足だから…)
男は少女を見つめながら静かに涙を流した。
最初のコメントを投稿しよう!