一章

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シュンは小学校で副委員長をしている。成績が良い訳でもなく、頼られているわけでもない。 しかし、誰もするものがいないので仕方なく推薦となったとき、なぜかシュンが選ばれたのだった。 ある日授業が終わって学校から出たシュンは、校庭の端のほうに立っている桜の木の下に同じクラスの集団を見つけたので、気になって近づいてみた。 「こんなところで何してるの?」 「知らないの?北校舎の3階のトイレに女の髪の毛があったんだって。 そして血がいっぱい落ちているんだって。」 重大そうに答えたのはクラスの委員長だった。 「知らないな。」 「そしたらね、夜、女の泣き声が聞こえるんだって。オバケがでるんじゃない?」 彼女の友達が恐ろしそうに付け加えた。 「いったい誰がその泣き声を聞いたのさ。」 シュンは落ち着いていった。 「知らないわよ。知らないけどほんとらしいよ。ねえ。」 委員長がみんなの顔を見た。みんな一斉にまじめな顔でうなずいた。 シュンはばかばかしそうに笑った。 「うそだよ、そんなの。」 「うそだって、どうして一ノ瀬君にわかるの?みんなはほんとうにオバケが出るって言ってんのよ。」 委員長の言葉に、そうだ、そうだ、と言うように生徒たちはうなずいた。 シュンは少し困ったが、言い返した。 「だって、オバケなんかいないって、お父さんがいってたよ。」
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