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カチャカチャと音をさせながら一人黙々と装備を続けていると、周りのざわつきが聞こえてくる。
最初は全く気にも留めてなかった少年だが、ある一言に手を止めた。
「…化け物だ」
思わず手に持っていた銃を落としそうになった。
しっかりと握り直し、目を伏せる。
「――だから大人は嫌いなんだ」
自分たちの都合しか考えず、必要なときには頼っていらなくなったら何もなかったように捨て去る。口から出るのはいつも自分を守るための言葉。何が本当で何が嘘なのかわからない。
そんなの、人間の皮を被っただけの、ただの動物だ。いや、まだ動物の方がマシかもしれない。
少年は気持ちを落ち着かせると、再び装備にとりかかった。
腰に巻いたホルスターに銃二丁と補充弾三つ。残りの一丁は左手に持ち、以前から持っていた銃は捨てた。
「動くな!」
一通りの身支度が終わった時、カチャリという音と同時に声が響いた。
少年はゆっくりと顔をあげる。
「ちょっと、時間とりすぎたかな?」
少年の視線の先には、自分を囲む国王軍の男たち。そしてたくさんの銃口。
その状況に少年はさほど慌てた様子でもなく、小さく呟いた。
それからおもむろに先程手放したライフル型の銃に手を伸ばす。
「動くなと言っている!」
「嫌」
「な!?」
右手にライフル型の銃を拾った少年は怪しく笑う。
その顔に、一人があっと声をあげた。
「く、黒髪に漆黒の眼…銃を持つ十代の少年……まさか!」
「おい?どうした!?」
急に顔色を変えた男に、また別の男が声をあげる。
カシャンと手から銃が落ちた。恐怖に色を染めたまま、震える口を男は開く。
「殺戮機械…フィーネ・ラジフェル……」
零れる言葉にみなが目を見開いた。
今、銃口を突き付けている少年を見ては体を震えさせた。
名前を呼ばれてますます少年――フィーネは笑みを増す。
「…今頃気付いても、遅いよ」
響く声。
その次に聞こえたのは、銃声と叫び声。
――そして、また屍が増えた。
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