180人が本棚に入れています
本棚に追加
*****
「でも、機械ってのは酷いな」
フィーネは一人愚痴った。
そこに先程までの黒さはない。歳相応の柔らかい表情。
ただ、服だけは未だ返り血に濡れていたが。
今は街の出口を目指してスタスタ歩いていく。
(これは全部俺の意志なのに)
“殺戮機械”。
さっきまで生きていた男が、フィーネを見てそう言い畏れた。その通り、フィーネはそんな称号付きで呼ばれている。
フィーネ自体はそんな風に呼ばれようと何も思ってはいない。唯一クレームをつけるとしたら、『機械』という部分のようだ。本人いわく、機械には意志がないため嫌らしい。根本的に突っ込むところが違うのだが。
そんなことを考えながらも、順調に進む。
探している人物、ドーバがいないのならこの街に用はなかった。
あのあと、国王軍を壊滅状態にさせ、間接的とはいえ街を救ったフィーネ。だが、今は街の人たちにとってはフィーネが脅威だった。
事実、今すれ違う人はおらず、街の人はみな家の中に引きこもり中だ。
「まぁ、礼なんか求めてないし。逆にいないほうがありがたい」
クスリと無邪気に笑う。
「さて…今度は西か」
ドーバが向かったのは西だとあの男は言った。本当にそうだという確証はないが、行かないよりはマシだと思った。
「俺の名前もまだ売れてないみたいだし、あっちから出向いてきてくれるのはまだ先かな…」
フィーネが人を手にかける理由は二つ。
信用できない醜く腐った大人を殺すため。もう一つは、手配を受けてあちらから出向いてもらうため。
どちらも同じくらい重要。
(西…はクレスタか。その先にはジャルナ。多分、制圧に行ったのはジャルナの方だろうな)
クレスタはとても小さな村。正直、そんな村を制圧したって何の利益もない。それよりか、栄えているジャルナを軍地にする方が有効だろう。
なにより、クレスタの田舎に反乱軍がいそうにない。
(次はクレスタを通ってジャルナか。…遠い)
はぁ、と大きなため息をつく。
最初のコメントを投稿しよう!