(2) 孤独と少年

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降り続く冷たい雨。 遠くで鳴り響くのは雷の音。 その悪天候の中を、銀髪の少年はひょこひょこと右足をひきずりながらも必死に走っていた。 少年の数メートル後ろには流民の男が二人。必死な少年を嘲笑いながら早足で追っている。 ここ、クレスタの村を今は豪雨が襲っていた。目も開けていられない程の雨。冷たいを通り越して痛いくらいだ。 今、村に他の人影は見当たらない。 少年と男二人だけ。 他の人は家に篭ってしまっている。 理由はこの雨のせいもあるのだが、少年に対しての村人の反応も理由としてあった。 クレスタの村は本当に小さな村だ。近所は家族も同然なんて言えてしまうくらい村人同士の繋がりは強かった。――ただ、一人の少年を除いて。 「はぁ……はぁ………あっ!」 少年は息切れをして苦しい胸を押さえながら走っていた。 男たちを撒こうと、細い路地裏をくねくねと進む。幼い頃からここに住んでいたため、どの道がどこへ続いているかなど頭に入っていた。迷うことなど有り得ない。 だが、遂に右足がつまずき、転んでしまった。ぐちゃぐちゃになった地面に思いきり突っ込む形になってしまったため、泥が顔に服にと付く。 「い…ぁう……」 「つっかまぁえたぁ」 「!?」 降ってきた声に少年は顔をあげ、体を緊張させた。 男たちはニヤニヤ笑いながら手を伸ばしてきた。それを少年はなんとかはじく。 「逃げても誰も助けてくれないぜ?ここの人間はどうもお前を嫌ってるらしいし」 弾かれた手を素直に下げて二人は笑う。 村の人間は少年を嫌っている。それは事実だった。 少年の過去、村に住む経緯など。全て嫌っている要素だった。 要するに、少年は村での存在を否定されているのだ。 少年が声をかけても、ぶつかっても、何をしたって村人は干渉しない。おかげでここ数年、少年と村人との会話は数える程しかない。 そのことをどこで知ったのか、男たちは少年を見て笑っていた。 一方、少年はまだ諦めずに立ち上がろうとしている。 「おっと、待てよ。まだ用事は済んでないんだ」 「言った通り、有り金全て頂こうか?」 「やっ!」 少年の腕を無理矢理掴み、ポケットを探る。出てきたのは少しばかりの小銭だけ。
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