(2) 孤独と少年

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この声が届くことはない。だけど、声に出さないと自分が壊れてしまう気がしたから出さずにはいられなかった。 それでも返ってきたのは雷鳴だけ。 少年は伸びてくる手に、ぎゅっと目を閉じる。 そして、最後の抗いをした。 「嫌……嫌だぁぁ!」 細い声で、精一杯叫ぶ。 直後。 それに応えるように、今度は雷鳴ではなく銃声が響いた。細い路地に響く、全てを正気に戻す音だった。 「誰だ!?」 男たちが慌てて振り返る。 少年も、涙で滲む視界の中で男たちの向こうに目を凝らした。 そこには銃口を天に向けて立っている黒髪の少年の姿。 「こんな雨の中、しかも男を襲うなんて、変な奴らだな」 唇に怪しく笑みを刻む。 「何だてめぇ!」 立っていた方の男が声をあげて近寄る。 相手が少年ということもあってか、銃も恐れず歩みだした。 が、まるで近寄るなと言いたげに、少年の銃が火をふく。 「ぎゃ!」 「…腐った人間には痛みと死を」 「なっ!?やめっ!」 ――パンッ 乾いた銃声と、ぴくぴくと痙攣する男の体。 彼はしばらくして息絶えた。 銀髪の少年は呆然とその光景を瞳に映していた。広がる血をただ静かに見つめた。 ふと、黒髪の、自分より少し年上に見える彼と目が合う。 瞬間、自分の手を握ったままの男が、ひぃ、と短く息をのんだのがわかった。その顔には、死に対する恐怖が浮かび上がっていた。先程までとは大違いだ。 しかし、なぜだか自分には恐いと思えなかった。 それは彼から放たれる殺気が自分に向けられていないせいなのかもしれない。でも、それだけではない気がした。 「な、何なんだお前!ここここいつのダチか!?」 男が乱暴に手で握る少年を前に突き出す。まるで盾にするように。 その姿に黒髪の彼は笑う。 「…醜いから、止めてくれない?」 彼は呆れたように笑った。 直後に響く銃声。 相変わらず何のためらいもなく男を撃ち殺した。 「……」 まるでモノを見るような冷たい瞳で、力を無くしていく男を見下ろす。だが、また何を思ったか口元だけ笑った。 銀髪の少年は少し浴びた男の血を気にすることなく、間接的に自分を助けた彼をじっと見ていた。 「悪魔…?」 そしてなんともなく呟く。
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