(1) 内乱と少年

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仮想世界。 この世界では、全ての人々が争いに身を投じ、血を、涙を流していた。 約三十年間止むことのないその争いは、時には国と国との戦争であったり、時には一つの国の中で起こる内乱であったり様々で。平和な場所などこの世界にありはしなかった。 それはここ、ルガニア国でも同じ。 ルガニアは十数の民族からできている国。荒れ始めた世界の中でも珍しく平和を保っていた場所だった。気候にも作物にも恵まれていたため、難民ということで他国から逃げてくる人も少なくはなかった。この国のように、世界が平和になればと誰もが願っていた。 しかし、それはある時一気に崩れ落ちる。 ――国王軍の国民虐殺行為。 世界が争いに包まれて数十年。 ルガニアでも国王軍が国民を切り捨てたことがきっかけで内乱が勃発。一瞬にして平和は消え去った。 どこへ行っても、死体、血溜まり、銃の音。 いつの間にか、好き勝手に暴れる国王軍に対して反乱軍が結成されるほど、内乱は本格化していた。 周りは敵だらけ。 限られた食物を取り合う大人たち。 無益な殺し合い。 銃を、剣をふるう大人は気付いていなかった。 力のない子供の目には恐れと憎しみしか映っていなかったことを。
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