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そんな争いに呑まれ続けているルガニア国のとある街。
街は内乱の影響か、建物は壊れ、所々で黒い煙があがっていた。煙たさに乗じて血の臭いも漂う。
ある日、この街に一人の人間が入り込んだ。
背格好からしてまだ十代の若い少年。ボロボロの薄汚い服を身に纏い、死臭漂う街を静かに歩いていく。周りの家から感じる視線を無視しながら、少年は確実に街の中心を目指していた。
まだそれだけであれば普通の子供に見えただろう。見方によっては、戦災孤児か何かで一人さ迷っている可哀相な子供で済んだかもしれない。
しかし、ただ一つだけ少年らしさを欠くものがあった。
左手に握るもの――銃だ。
銀色に鈍く光るそれは少年の手にしっかり握られていた。小型のハンドガン。しかし、小さかろうとも殺傷能力はもちろんある。
そんなものを手に持つ少年は、戦乱の世といえど明らかに周囲と違う空気を纏っていた。
中心に向かって行く途中、街の人間が少年を見て小さく悲鳴をあげた。
それは銃を恐れてか、少年を恐れてかはわからない。ただ、恐怖の表情だけ浮かべて家の中に消えていった。
それに反応して、他の人間たちも少年を避け、道を開けていく。
「…くだらない」
周囲から聞こえる囁き声と視線に、少年は笑い吐き捨てるように言う。
その声は少年の外見には似合わないくらい大人びていて。だけども、とても冷たかった。
周りを一瞥したあと、少年はまだ歩みを止めず足を進めていく。
「おい!そこのガキ!」
その時、後ろから声をかけられた。
少年はそれに素直に反応して振り返る。半分めんどくさそうに、半分嬉しそうな表情で。
そこにいたのは国王軍の服を着た男が三人。その手にはそれぞれ銃が持たれている。破壊力のあるライフル型だった。
少年は男たちを見ると微笑を浮かべる。
「…何か用?」
「何か用だと?お前が持っているその銃は何だ!この街は銃所持を禁止したことを知らないのか!?」
真ん中の男が大声で怒鳴り散らす。
少年はその声に少し顔をしかめた。が、すぐに唇が孤をえがく。
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