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「俺、ここの人間じゃないんで」
少年はそう呟いて肩をすくめてみせた。
しかし、だからといって男たちも仕方ないと見逃すわけがない。今度は右側にいた少し細めな男が言う。
「禁止なことを知らなかったとでも言う気か?街の入り口に札をだしていたはずなんだがなぁ!」
言われて少年は記憶を探る。
すると、一つだけ浮かんできたものがあった。
「…あー、あのボロボロの札のこと?あれ、字が滲んでて何が書いてあるのか読めなかったんだけど?」
あくまで素直に事実を口にする。ただ、ボロボロだったため、その札を入り際に壊したことは伝えなかったが。
少年のその言葉に、男たちはますます激高する。
「だ、だいたい、ここら周辺は国王軍の支配下に入っているから、どこも銃所持を禁止してるはずだろう!」
「俺、この辺の生まれじゃないんで。ルークって北にある村なんだけど知ってる?そっから来たからこの辺全く知らないんだよね」
「――っ!」
ああ言えばこう言う。
そんな会話が淡々と続いた。しかし、お互い全く譲ろうとはしない。
少年は男たちの表情がどんどん変わっていくことが面白いようで、楽しそうな笑いを浮かべていた。
全ては事実。少年は嘘をついてはいない。だから余計に男たちにとっては分が悪く、少年は男たちの困っていく様子に笑顔を見せるのだった。
だが、何度目かのやり取りで、ようやく男たちは痺れを切らした。
真ん中の男がずいっと少年に歩み寄る。
「とにかく!この街では銃所持者を裁く決まりとなっているんだ!お前が何と言い訳しようと、これは変わらない!」
強行突破にでたな、と少年は呑気に構える。
しかし、少年自身も「はい、そーですか」と頷くつもりはさらさらなかった。この銃は自分を生かすためのもの。手放すなんて考えたこともなかった。
自分を捕まえようと伸びてきた手に気付き、少年は一歩後ずさる。
「どうしても、これを渡さないと駄目?」
「当たり前だ。規則は規則なんだからな」
「ふーん。なら聞くけど、おっさんたちのソレはどうなんだよ」
一定の距離を保ったまま少年は男たちの銃を指差す。
「街での銃所持が禁止なら、それも規則ってのに触れるんじゃない?」
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