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「で、今現在は目星い子っていないの?」
「いないなぁ……」
適当に返答した後で、ビールを飲み干しながら、昨日のことを思い出した。
「ああ……でも、昨日ウチの隣りに越して来た子がいてさ。割りと可愛い子ではあったなぁ」
「へぇー!どんな感じ?」
覚えている姿を頭の中で再構成する。
そうそう……
笑顔が可愛くて……
「あ、ワタラセさん!」
そう、ちょうどそんな声!
「……って、え!?」
浩太郎が我に返ると、目の前に立っていたのは、頭の中思い浮かべたその人物だった。
「ワタラセさんですよね!?偶然ですねっ!」
「あああ、えーっと……よ、芳野さん……だっけ?ビックリだよ」
やましいことはないはずなのに、つい動揺して吃る。
「あーよかったぁ。覚えていただいて光栄です!ちょうど私も皆で飲みに来てて」
花が舞うような笑顔。
昨日会った時よりも少し華やかな格好をしている。
清則は好奇の目で二人のやりとりを追う。
「お前、何妙な顔してんだよ。えーと、彼女がウチの隣りに引っ越して来た芳野……」
「芳野悠花(ヨシノ ユウカ)です。よろしくお願いします!」
「あーどうも!川嶋清則ですー。浩太郎が可愛いって言うもんだからどんな子かと思ったら、マジ可愛いですねー」
「てっ、テメー!」
「ぐえぇー」
清則の余計なカミングアウト。浩太郎は照れ隠しに彼の首を軽く絞めた。
「あはははは!やー、仲良いですねー!今度仲間にいれて下さいよぉ」
「もちろん、こんなんで良ければ」
じゃあ、とお互いに笑顔を交わして、悠花は友達の輪に戻っていった。
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