1、始マリノ鐘

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「で、今現在は目星い子っていないの?」 「いないなぁ……」 適当に返答した後で、ビールを飲み干しながら、昨日のことを思い出した。 「ああ……でも、昨日ウチの隣りに越して来た子がいてさ。割りと可愛い子ではあったなぁ」 「へぇー!どんな感じ?」 覚えている姿を頭の中で再構成する。 そうそう…… 笑顔が可愛くて…… 「あ、ワタラセさん!」 そう、ちょうどそんな声! 「……って、え!?」 浩太郎が我に返ると、目の前に立っていたのは、頭の中思い浮かべたその人物だった。 「ワタラセさんですよね!?偶然ですねっ!」 「あああ、えーっと……よ、芳野さん……だっけ?ビックリだよ」 やましいことはないはずなのに、つい動揺して吃る。 「あーよかったぁ。覚えていただいて光栄です!ちょうど私も皆で飲みに来てて」 花が舞うような笑顔。 昨日会った時よりも少し華やかな格好をしている。 清則は好奇の目で二人のやりとりを追う。 「お前、何妙な顔してんだよ。えーと、彼女がウチの隣りに引っ越して来た芳野……」 「芳野悠花(ヨシノ ユウカ)です。よろしくお願いします!」 「あーどうも!川嶋清則ですー。浩太郎が可愛いって言うもんだからどんな子かと思ったら、マジ可愛いですねー」 「てっ、テメー!」 「ぐえぇー」 清則の余計なカミングアウト。浩太郎は照れ隠しに彼の首を軽く絞めた。 「あはははは!やー、仲良いですねー!今度仲間にいれて下さいよぉ」 「もちろん、こんなんで良ければ」 じゃあ、とお互いに笑顔を交わして、悠花は友達の輪に戻っていった。
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