1、始マリノ鐘

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悠花が去った後も、清則はニヤニヤとしながら浩太郎に視線を送る。 「……なんだよ」 「いやぁ、本当に可愛い子だね。浩太郎にお似合いじゃない」 「バーカ。昨日挨拶したばっかだぞ。そんなんじゃねぇよ」 「じゃあ、これからだね。家が隣り同士なんて、すげぇドキドキだわー」 勝手に盛り上がる清則に、浩太郎は飽きれてしまった。が、悠花の登場に、失恋の話はかき消されていた。 弾む会話に、上手い酒。 店に来て二時間を過ぎる頃にはすっかり酔いがまわり、男二人今日のところは店の前で別れ、それぞれ帰宅することにした。 「げ、もしかして明日一講目からじゃねーか」 「寝坊気をつけなよー」 「わかんね。普通に寝てるかもなー」 「浩太郎だしね。まぁまた明日ー!」 「うース、お疲れー!」 浩太郎は清則に軽く手を振って、歩き出した。 気分が良い。 夜の街特有のざわめきも、なんとなく心地良く感じる。 もう見慣れてしまった、居酒屋からの帰り道。少しずつ変わっていくものも、変わらないものも、沢山のものが自分を取り巻いている。 何でも受け入れよう。そんな気持ちだった。 コンビニでもう一缶、ビール買っていくか……。 そう考えていると、背中に軽い衝撃を受けた。
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