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悠花が去った後も、清則はニヤニヤとしながら浩太郎に視線を送る。
「……なんだよ」
「いやぁ、本当に可愛い子だね。浩太郎にお似合いじゃない」
「バーカ。昨日挨拶したばっかだぞ。そんなんじゃねぇよ」
「じゃあ、これからだね。家が隣り同士なんて、すげぇドキドキだわー」
勝手に盛り上がる清則に、浩太郎は飽きれてしまった。が、悠花の登場に、失恋の話はかき消されていた。
弾む会話に、上手い酒。
店に来て二時間を過ぎる頃にはすっかり酔いがまわり、男二人今日のところは店の前で別れ、それぞれ帰宅することにした。
「げ、もしかして明日一講目からじゃねーか」
「寝坊気をつけなよー」
「わかんね。普通に寝てるかもなー」
「浩太郎だしね。まぁまた明日ー!」
「うース、お疲れー!」
浩太郎は清則に軽く手を振って、歩き出した。
気分が良い。
夜の街特有のざわめきも、なんとなく心地良く感じる。
もう見慣れてしまった、居酒屋からの帰り道。少しずつ変わっていくものも、変わらないものも、沢山のものが自分を取り巻いている。
何でも受け入れよう。そんな気持ちだった。
コンビニでもう一缶、ビール買っていくか……。
そう考えていると、背中に軽い衝撃を受けた。
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