1、始マリノ鐘

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スイッチを押すと、瞬くような音がして部屋の蛍光灯が灯る。 いつもの汚い部屋。 彼女が家に来る時は、床に散乱したものを隅っこに追いやってスペースを作る。その繰り返しで特段片付けることをしなかったから、部屋はどんどん散らかっていった。 ……ちょっと落ち着いた頃に片付けでもするか。 今はまだ、したくない。 部屋の中まで空っぽになってしまいそうで。 散らかった雑誌やゴミや服なんかが、自分の空虚な気持ちを少しでも埋めてくれているような気がした。 コンビニ弁当を取り出しレンジに放り込む。適当に二分程度に目盛りをセットした。 ピンポーン。 家のチャイムが鳴った。 反射的に、携帯を見る。 家にやって来る時は必ず携帯に電話してからチャイムを鳴らす、彼女の習性。 しかし携帯に着信はない。 馬鹿か。当たり前だ。 自嘲して薄く笑う。それでも玄関ドアを開けるまでわずかな期待は消えない。 しかしそこに彼女はいない。立っているのは、別の見知らぬ若い女だった。
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