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スイッチを押すと、瞬くような音がして部屋の蛍光灯が灯る。
いつもの汚い部屋。
彼女が家に来る時は、床に散乱したものを隅っこに追いやってスペースを作る。その繰り返しで特段片付けることをしなかったから、部屋はどんどん散らかっていった。
……ちょっと落ち着いた頃に片付けでもするか。
今はまだ、したくない。
部屋の中まで空っぽになってしまいそうで。
散らかった雑誌やゴミや服なんかが、自分の空虚な気持ちを少しでも埋めてくれているような気がした。
コンビニ弁当を取り出しレンジに放り込む。適当に二分程度に目盛りをセットした。
ピンポーン。
家のチャイムが鳴った。
反射的に、携帯を見る。
家にやって来る時は必ず携帯に電話してからチャイムを鳴らす、彼女の習性。
しかし携帯に着信はない。
馬鹿か。当たり前だ。
自嘲して薄く笑う。それでも玄関ドアを開けるまでわずかな期待は消えない。
しかしそこに彼女はいない。立っているのは、別の見知らぬ若い女だった。
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