ー元治元年ー  京

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男、髪は癖が酷く、剛毛で肌は浅黒い。 目は細いが、けして睨み付けている様には見えず むしろその奥には優しさが見え隠れすらしている。 ガッチリとして太い腕からも相当の体格が伺い知る事が出来る。 「わしも飛ぶ事が出来たらどんだけ便利かの」 訛りの強さから生粋の土佐人である事は明らかである 「あなたに羽があれば何処飛んで行くか分からしませんよって困りものどすな」 少々嫌みを含んだ言い方であった 「じゃきに、わしにゃ羽が生えちょらん。おんしも心配せんでエエっちゅう事じゃな」 嫌みを嫌みとも思わず 人の心を緩めるその人懐っこさは天性の物があった。
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