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「飛燕…何時からそこに……」
蔵馬は、少し頬笑みながら飛燕に歩み寄る。
「いや…声を掛けようと思ったら…知り合いらしいのが来たから……」
飛燕も、苦笑いを浮かべながら蔵馬の元に歩む。
「もしかして…奴を蔵馬の護衛隊長にするのか?」
「うーん…腕は良いんだが……
玄武殿の部隊だから…無理かもな……」
蔵馬は、爽翔が玄武の部隊に所属している為に、自分の護衛隊長を諦める。
すると飛燕が、いきなり蔵馬の両肩を掴み語り始める。
「そんな事は無いだろう! 自分の部隊じゃ無いからって…自分の護衛に出来ないとは限らないだろう!」
「まぁ…確かに……」
蔵馬は、飛燕の意見に少し考えながら返事を返していた。
「それなら…朱雀に申請しよう! 候補を皆の前で観せるんだよ!
それで…自分の護衛隊長を決めるように…それなら出来るだろう!」
「確かに…それなら可能だな……」
飛燕の言葉に圧倒されているのか、蔵馬も徐々に飛燕の意見に納得していた。
「ヨシ! それなら早速朱雀に交渉するぞー!」
飛燕はそう言うと、朱雀の部屋へと向かっていった。
「おい飛燕! いきなり行っても朱雀殿に迷惑が……」
飛燕は、止める蔵馬の言葉を一切聞き入れず朱雀の部屋に走っていた。
その頃、龍弌も自身の護衛隊長の事で一人悩んでいた。
その悩みを晴らす為に、一人黙々と武術の鍛練をしていると、何処からか懐かしい声が聞こえてきた。
「相変わらず…真面目だな龍は……」
「えっ! 今の声は……」
ピシュン! カッ!
声のする方に龍弌が振り向くと、一寸の狂い無く龍弌の手前に一本の矢が刺さる。
すぐに槍を構え、攻撃態勢に入る龍弌を観て、矢を放った本人が話掛ける。
「久しぶりだな龍…相変わらず真面目な弟だよ……」
龍弌は体を震わせ持っていた槍を思わず落とす程驚いていた。
そこには、龍弌の義理の兄項禅が目の前に笑顔で立っていたからである。
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