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鬼の体が大きく震え、啓太は優しく青くなっている頬へと手を伸ばした。
「ごめんね…大丈夫?」
「啓太!そいつは……!」
「大丈夫だよ。もう、この子には僕たちを殺す気なんてないと思うから」
そう言いながら啓太は鞄から湿布を取り出すと透明シートを剥がし、鬼の頬に張る。
鬼は啓太の一挙一動に怯えていたが、やがて自分を手当てしてくれたのだと分かると少しだけ張り詰めていた糸が緩んだのか静かに口を開いた。
「ぁ……ありが…とう……」
「いいえ。どういたしまして」
小さくお礼を言えば啓太は満面の笑みで返す。
その様子を見ていた一樹たちは思わず溜め息を吐いた。
「本当に啓太ってばお人好しなんだからなぁ……鬼の手当てをするなんて」
「ま、僕はその部分が釘野くんの良い所だと思うけどね。…それよりも…今は大平くんをなんとかしなきゃ」
「…大和はもう病院に戻した方が良いんじゃないのか?」
万全の状態ならまだしも大和は怪我を負っている。
一樹がそう呟けば、七観はしばらく考えると小さく首を横に振った。
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