街に出て

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最初は渋谷に行ってみたが、私はただ懐かしく思うだけで魅力を感じなかった。自分と同じ年頃の少女達は、自分が本当に17歳の時には見た事もない姿をしていて、薄汚かった。 若い男が、モデルにならない?化粧品を試してみない?等としつこく話かけてくる。私は、それらが皆インチキなのを知っている。 当時の友達が、それで高額な化粧品を買わされたのを、知っている。 昔あった、暗い隠れ家のような喫茶店がまだあった。懐かしさのあまり入ってみた。その店だけは時が止まったように当時と変わらず、薄暗い店内にクラシックが大きな音で流れていた。メニューも多くはなく、コーヒーを注文し、クラシック音楽を聴きながらコーヒーを飲んだ。壁には白黒の昔のバレエの写真等が貼ってある。カウンターには沢山のLPレコード。今はCDも並んでいた。店には何かわからないが、壮大なオーケストラの演奏がかかっている。しばし目を閉じて、当時の自分を思い出してみる。若く、愚かだった昔。愚かなのは今も変わりないが。
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