始まり

3/5
前へ
/54ページ
次へ
 何か、変な感じがする。とにかく静かな場所に行きたくて、図書館を訪れた。適当に本を選び、日差しの明るい窓際の席へ座る。大きな窓から外を覗くと、青々とした緑の木が並んでいた。本を開き、読んでいるふりをする。  何なんだろう、この気持ちは…。親友に初めて彼女が出来た。それが何だか頭を混乱させる。裕也に彼女が出来たら、僕と遊ぶ回数が減ったりするんじゃないか?話もきっと、彼女に関する話ばかりして来るだろう。現に、拓巳が良い例だ。彼は、彼女が出来ると彼女の話ばかりして来る。彼女がいない時はよく遊びに誘って来るが、彼女がいる時は全くと言って良いほど誘いがない。もし裕也がそうなれば、僕は休日暇が多くなる。休日大抵一緒に遊ぶ相手は裕也だ。他にも友達は沢山いるが、殆どが彼女持ちでたまにしか相手にしてくれない。まあバイトを増やせば良いだけの話なのだが、何だか気持ちがすっきりしない。みんな彼女カノジョって…そんなに彼女が出来ると良いのか?全く興味がない訳ではないが、実際恋愛感情を持ったことのない人間が、無理矢理彼女を作ったって相手に失礼だ。  今まで告白されたことは何回かある。誰かに言ったら生意気だと思われるかもしれないが、これでも以外とモテたりする。告白は今までで四、五人くらいからされただろう。でも、全て断ってしまった。自分が相手のことを好きでもないのに、それでも付き合ったりしたら、それは相手に失礼でもあり、自分の本心で許せない行為だったからだ。  そういう訳で今までで彼女のいない僕だが、恋愛をしてみたい気持ちはある。どうすれば、心の底から好きだと思う感情が湧くのだろう。とにかく、出会いがなければ始まらないのか?  そんなことを考えていると、もう昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴ってしまった。僕は急いで本を元の場所に戻し、教室へ戻った。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

110人が本棚に入れています
本棚に追加