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綺羅と共同生活(同棲と言うには色気がなさすぎる)をするようになり、幾日経っただろうか。
すっかり慣れた藤田は、新たな綺羅の一面を知った。
まず、酒豪だ。
毎晩、縁側で月見酒である。
ごくたまに藤田も付き合うが、基本的には綺羅一人だ。
放っておいたら際限なく飲むので、藤田が量を決めている。
そして、藤田以外と関わろうとしない。
同じ職場の者と藤田とで反応が違うのは藤田自身も分かっている。
そんな綺羅を見て、藤田はやはり思うのだ。
あいつに似ている、と。
"あいつ"は酒豪でもなければ、無愛想でもなかった。
何が似ている、と聞かれたら答えられる自信が藤田にはない。
だがしかし、似ている。
「郎…五郎!」
「なんだ?」
「どうした?ぼーっとして」
確かに、藤田は箸を持ったまま動いていなかった。
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