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勿論人の城であるから、何処が王子の部屋だか分からない。だが適当にメイドに案内させれば馬鹿みたいに分かりやすい部屋に通された。
「人魚姫に気付かない馬鹿は部屋ばかり綺麗なんだな」
誰が見ても豪華な部屋。流石は王子様である。司書は本日三度目の溜め息を吐いてバルコニーへ出た。
「――ん?」
波の音に乗って聞こえてくるのは美しい女性の声。どちらかと言えばアンデルセンの話だが、オリジナルでは無いからだろう、展開が多少ディズニーの様で笑ってしまった。
――郷に入らば郷に従え。
司書はまた溜め息を吐いてから浜辺の女性を捕まえるべく走り出した。
「おめでとうございます!!」
浜辺の女性を捕まえる事に成功した司書は口々に家臣から拍手が送られていた。それに張り付けた笑顔で応える。肩を抱く彼女は玉の輿に乗りたいのだろう、本当の事など述べずにいけしゃあしゃあと「私が助けましたの」などと笑顔を振り撒いていた。
なぜこんな女を王子は彼女と間違えたりするのだろう。何処まで王子は馬鹿なのだろう。そんな事を思いつつ人魚姫を探したが姿は見つからなかった。
その晩、そのまま王に謁見して明日明後日にでも式を挙げる事となった。
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