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あたしは出せない手紙を
何度も頭の中で書く。
住所もなにもしらないけど
届くこともないけれど
いつしか日課のようになってしまった。
『亜美さん。』
見て。
そういって遠藤さんは
顎の先で外を見るように促した。
雪。
レジの後ろの窓を開けて
手を出してみた。
裏の駐車場に一台車が止まったのが見えたけど
あたしは手を引っ込めなかった。
ひんやりと凍るような空気が
あたしの手を指すように抜けていく。
そして緩やかに落ちる雪が
ふっ
と舞って
シルバーの指輪に落ちた。
ゆっくりと溶けてなくなると
もう一つ落ちて来た雪が
手の平に乗る。
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