これは夢か現実か

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 中庭の地面にしゃがみこみ、必死に何かを探している人影。植え込みの下、芝生の間……見つかるわ分けない、俺が持ってるんだから。 「うそぉ、どこいったんだろ」  小さくこぼれた声に聞き覚えがある気がした。一体、誰の? 「ああ、もう。眼鏡邪魔」  片手で眼鏡を握り、キョロキョロと辺りを見回す。おもむろに、ポケットから小さなケースを取り出した。 「まあいいや、今日はもう帰るだけだし」  ごそごそと何かをし、またケースをポケットにしまう。  そろそろ、話し掛けるか。いつまでも持っていても仕方がない。 「水瀬(みなせ)さん」  大げさすぎるほど、肩が跳ねた。
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