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チャリンチャリン。
――その時、架涙達の間をびゅんと一台の自転車が通り過ぎる。
架涙と絵理菜は突然の出来事にあたふたしながらも何とか避けるが、ぶぁっと風に吹かれて髪が乱れる。
「あっぶないわねっ!!ちょっとぉ!!!」
絵理菜がいきり立って怒声を挙げる。
春風になびく爽やかな黒髪に、人形のように真っ白い肌。
学ランに身を包んだ青年……。
「……。」
架涙の目は、その青年に釘付けになっていた。
走り去った後も、架涙はただ呆然と青年の姿を目で追っていた。
「ちょっと架涙っ!あんたからも一言言ってやってよぉ!」
「……え?」
絵理菜のお怒りモードとは対象的に、架涙は夢見る夢子のように手を組み合わせてぽけ~っとしていた。
「もう!目ぇ覚まさんかぁ~いっ!!!」
絵理菜の怒りの矛先は架涙に向けられ、架涙にボコッと怒りの鉄槌が下った。
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