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言った瞬間、自分の胸がドキンと強くなった。
彼は何も言葉を発しない。
変わりにその足がピタリと止まった。
坂内は振り向かない。
「あたし…………」
「………………」
「坂内が好き。」
あたしは駆け出した。
彼を追い越し、振り返らず、ただ前に走る。
聞こえた。
坂内の声。
後ろから呼ぶ。
走ってあたしを追い掛けて、彼は「白石!」って叫んでいる。
あたしは聞かない。
だって知ってるから。
坂内の本音。
坂内の気持ち。
彼が……
彼のユーレイ……
そう
彼の魂が、答えを教えてくれていたから。
「白石っ!ちょっと……待てってば!」
「走らないと優花たちに追い付けないでしょ~?」
「待てよ!そうじゃなくて───…おまえ今……」
陽が落ちる。
日が終わり
もうすぐ冬が終わる。
そして春が来たとき
あんたとあたしの距離は
どんなふうに変わっているのかな
ね。
坂内────。
振り返ったあたしは、満面の笑顔を彼に向けた。
同じように笑った坂内の顔に
その答えをもう一度感じて
あたしはまた「好き」と言った。
───END───
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