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「げっ!!」
「橘様!!」
メイドは慌ててお辞儀をし、優花はあからさまに嫌そうな顔をした。
そこには、黒髪をオールバックにし、切れ長の黒い瞳にノーフレームの眼鏡をかけ、スーツを着た男性が立っていた。
「お嬢様、お部屋にお戻り下さい。先生がいらっしゃってますよ。」
「やだ。折角天気良いのに、部屋にこもって勉強だなんて、もったいないわ。」
優花はツンとそっぽを向き、部屋に戻ることを明らかに拒否した。橘は分かっていたことだったので、大して驚きもしなかった。
そして、奥の手を使うことにしたのだ。
「はぁ…優花さま、お戻り下さい。さもないとお父上様にご報告させて…」
「分かったから!!行くから、お父様には言わないで!!後が恐いわ…」
そう言うと、優花はアダムを抱いたままダッシュで部屋に戻った。
「お嬢様を見つけてくれてありがとうございます。毎度すみません。」
「いいえ、橘様も大変でございますわね。」
「もう少しの辛抱ですよ。そうすれば、お嬢様も逃亡なんてできなくなりますから。」
橘は不敵に笑うと優花の後を追った。
この橘の言葉の意味は、すぐに優花にも分かることとなるのだった。
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