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有り合わせの材料で、炒飯を作り簡単に昼食を済ませて、さあコーヒーでも飲もうと準備を始めた時に、その電話が鳴った。「もしもし、薫?私よわかる久し振りね。」短大時代の友人の、奈保子からだった。「奈保子、奈保子なの?ビックリしたわ、元気なの。」奈保子は、商社マンと結婚したが、去年離婚したと別の友人から聞かされていた。「元気よ、独りになったら寂しくなるかなって思っていたけど、今は最高に快適よ。」短大時代とまったく変わりがない、屈託のない性格は昔のままだった。「たまには、お茶でもしましょうよ」奈保子に聞いてもらいたい愚痴もある、昔の友人に会える事で、心の中の鎖が解き放されるかも知れない。「それより、薫今週の金曜の夜出られない?」「金曜?ええ大丈夫だけど、何かあるの?」薫は、不安を隠せず奈保子に問詰めた。「連れて行きたいところがあるの、変なとこじゃないわよ、ホストクラブ」薫は一瞬たじろいだ。ホストクラブなんて、自分とはかけ離れた世界だ。まして、何万 何十万と高い、飲酒代がかかると聞いた。「ごめんなさい、私には無理よ」「お金の心配はいいの、じゃ、金曜八時に、パークタワーの前でね。」「あぁ、奈保子」電話は、一方的に切れた。ホストクラブ、その未知な世界に 薫の気持ちは、揺れ動いていた。
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