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男は、イヤリングを触って、安心している栞を見て、それは大切なものかと見ていた。
やはりその耳飾りも、この女も不思議で面白そうだと思っていた。
そう考えている男に一人の男が近づいて来た。
緩く波打つ髪を靡かせながら球砂利を踏み歩いてくる。
そして、声の届く辺りに来ると立ち止まり声をかけた。
「知盛殿。」
知盛と呼ばれた男は、栞を眺めていて、男が近づいてくるのにも気がつかなかった。
知盛は、栞に興味を持ち、面白そうに眺めていた。
栞に向けていた視線を声をかけた主へ移す。
「惟盛殿、どうなされた。こんなところまで。」
「どうなされたって、貴族の姫君達があなたを探しているのです。いきなり居なくなってしまわれるから、どこに行かれたのです?と姫君達に聞かれて困り果てていたのですよ。」
「これは失礼。」
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