第二話~十六夜の月夜~

18/30
前へ
/768ページ
次へ
男は、イヤリングを触って、安心している栞を見て、それは大切なものかと見ていた。 やはりその耳飾りも、この女も不思議で面白そうだと思っていた。 そう考えている男に一人の男が近づいて来た。 緩く波打つ髪を靡かせながら球砂利を踏み歩いてくる。 そして、声の届く辺りに来ると立ち止まり声をかけた。 「知盛殿。」 知盛と呼ばれた男は、栞を眺めていて、男が近づいてくるのにも気がつかなかった。 知盛は、栞に興味を持ち、面白そうに眺めていた。 栞に向けていた視線を声をかけた主へ移す。 「惟盛殿、どうなされた。こんなところまで。」 「どうなされたって、貴族の姫君達があなたを探しているのです。いきなり居なくなってしまわれるから、どこに行かれたのです?と姫君達に聞かれて困り果てていたのですよ。」 「これは失礼。」
/768ページ

最初のコメントを投稿しよう!

211人が本棚に入れています
本棚に追加