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悪びれもせずに言う知盛から視線を外し惟盛は栞を見る。
「時に知盛殿。」
「なんだ?」
「そこの愛くるしい姫君は?」
知盛はちらっと栞を見ると、栞は惟盛の方を見ていた。
少しそれが気にくわず眉を寄せるが、すぐに惟盛に視線を戻し、さらりという。
「十六夜の月と共に参られた姫君だが?」
「ほぅ・・・美しい・・・。いえ、愛らしいでしょうか。その美しい涙も含めて・・・。」
そういって笑う惟盛を見て知盛は、口を開く。
「惟盛殿。先に宴の席に戻られよ。我もすぐに行く。」
「わかりました。それでは十六夜の姫君。良き宴を。」
「・・・。」
知盛は、惟盛が去るのを見送った後、栞に視線を向ける。
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