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重衡が栞に声をかけた時、ここに来る前に聞こえた鈴の音が栞に聞こえた。
「鈴の音・・・もしかして・・・また・・・。」
「どうかしたのですか?」
栞の表情が変わったことに気がついて重衡は少し不安になる。
「私が消える前に、言いたいことがあります。」
「なんでしょう。」
「この邸は、この先の未来、燃えてしまいます。」
「燃える?この六波羅がですか?」
「はい。」
「不穏なことを言う姫君ですね。」
「でしょうね。」
「平家の滅びを十六夜の姫君はご存知というわけですね。」
「・・・はい・・・。この桜も焼けてしまうでしょう。」
「・・・そうですか。今宵は不可思議な夜だ。平家の滅びを告げる神名ぎが、これほどに美しいお嬢さんだとは思いませんでした。」
栞は重衡がこの話を信じないだろうと思っていたが、重衡があっさりと受け入れたことに驚いた。
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