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学校の玄関を出ると空は黒く外は雨が降っていた。
まわりに生徒はいなく、栞は一人だった。
傘もささずに雨の中を歩き出した。
雨か・・・。
雨の日なんて嫌い。
今は梅雨の時期ではない。
桜の木には花が満開で、花びらをひらひらと優雅に散らす時期のはずなのだがここ最近はずっと雨の日が続いていた。
雨の中、家に帰る道を歩いていると、リーン、リーンと鈴の音が聞こえてきた。
鈴?
鈴の音は鳴りやむことはなく栞の耳に届く。
音の出所は近い。
でも、近くに人はいないし、一体どこから聞こえるんだ?
鈴の音は、言の葉を紡いでいるわけではないのに、どうしてだろう・・・。
この鈴の音が私のことを呼んでいる気がする。
だれだ・・・私を呼んでいるのは・・・。
この鈴の音の先にいるのは誰?
なぜ、私を呼ぶ?
誰からも頼られることも、必要とされることもない、私を。
栞は、鈴の音に導かれるまま歩いていった。
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