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「雨・・・やまねぇな。」
俺は、寺の廊下に座っていた。
雨の降る黒い空を見上げていた。
頭に思い浮かべるのは、梦冬 栞(ムトウシオリ)の顔。
幼なじみのような奴で、なんか気にかかる奴。
心を、俺や弟の譲、幼なじみの望美以外には閉ざしていて、でも、人を拒絶するところはないのに、誰も近寄らない。
昔から、孤独が寄り添っている奴だった。
あいつ・・・今どうしているんだ・・・。
泣いて・・・ないよな。
前に一度、俺が七時ぐらいまで学校に残って帰りが遅かった日があった。
その日は雨で、この神社の前を通ったら、あいつが御神木の前で傘もささずに泣いていたことがあった。
好きな奴にフラれたわけでもなく・・・。
理由は、孤独に押し潰されそうだったって言っていた。
いつも一人で、誰にも必要とされなくて、どうして自分はここにいるんだろうって言っていた。
いつもは、そんなことも言わなかったから、この日ばかりはかなり驚いた。
それ以来雨の日は、またあいつが泣いていないか気になって、ここに来ていた。
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