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栞は、あれから鳴り止むことのない鈴の音に導かれ、歩いていた。
その鈴の音の中に声が聞こえる。
「神子様・・・こちらへ。」
年上の男の声・・・。
それが私を呼ぶもの。
お前は誰だ?
どうして私なんかを呼ぶ。
空を見上げながら考え事をしていた将臣が視線を戻したとき、ふらふらと栞が歩いていくのが見えた。
「栞?」
どうしてここに・・・?
また泣きたくなったのか?
でもそれにしては様子が変だ。
歩き方もいつもと違うし・・・。
「おい、栞。」
何かおかしい。
栞、どうしたんだ?
いったい。
将臣は、名前を呼んでも気が付かない栞に走り寄って腕を掴んだ。
「おい、栞、どうしたんだよ。」
すると、やっと気付き、栞が将臣を振り返る。
その栞はいつもと変わらない栞だった。
「えっ、将臣。あれ、どうして私はここに・・・。」
鈴の音が聞こえて、男の人の声が聞こえて・・・。
私は無意識にここに来たの?
「俺もしらねぇよ。」
どうしてか考えようとすると再び男の人の声が聞こえた。
神子様・・・こちらです。
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