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何故だろう
胸が、痛くなった
だって
俺は彼を見た事がなかったし
知りもしなかった
なのに
「…圭吾」
何故、そんな顔をするの?
「…蓮って不思議な人だね」
吊られて
泣きそうになったから
笑って
空気を誤魔化す
蓮はもう一度悲しそうな顔をしてから
「圭吾には負けるよ」
そのまま、笑うんだ
「…元気がないのは、アンタの方じゃないの?」
口が勝手に動いた
悪気はなくて
ただ、そう思っただけ
「ん…そうかも。圭吾が元気にしてよ」
困ったように
眉を下げながら言うから
「…如何したら元気になんの?出来る事なら何でもするし」
自分でも驚く言葉を掛けてしまった
「じゃあ、さ…」
蓮の方を向き
続きを促した
「――っ」
何が起きたのか理解できなくて
口元に、温かいモノが触れた
「…元気になったよ、ありがとね?」
目の前には、蓮の優しい笑い顔
「え、ちょっ…何…」
唇が重なったのだと
漸く、理解できた
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