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「…びっくりした?」
驚いたは驚いたよ
だけど
男に口づけされたのに
嫌悪感を感じなかった自分に
一番、驚いたんだ
「何で…?」
これを聞くのが精一杯で
顔は引き攣っているのだろう
「…圭吾が好きだから」
朝日は相変わらず綺麗で
彼の栗色の髪を際立たせる
波の音は静かで
でも、其れすら聞こえなくて
視線が外せない
微塵も、動けそうにない
「…圭吾が、好き」
とても優しい笑顔に
心の奥が
温かくなる
「…俺、男だよ?其れに蓮の事何も知らない」
漸く、冷静に返答が出来た
「好きになるのに男も女も関係ないだろ?たまたま好きになった相手が男だっただけ」
何も、言えなくなってしまった
「でも…」
「付き合えなんて言ってないよ。ただ、伝えたかっただけ」
つくづく
不思議な奴だと思った
「さて、そろそろ送るよ。車乗っ」
「いつから?」
蓮の言葉を、制してしまった
辺りには
街が動きだして
慌ただしさを告げる、車のクラクションの音
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