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車は海辺の駐車場に入る
まだ春も遠いから
俺達の貸し切りだった
「…お腹空いたんだろ?降りるぞ」
こんな海辺で
しかも時期外れなのに
「…何もないじゃんかー」
砂浜を、二人で歩く
段々疲れてきて
「蓮ー…」
数歩先を歩く彼の
上着の裾を緩く引っ張る
「もうすぐ着くから…ほら、見えてきた」
肩越に振り返る彼を見上げると
視線が、交わる
そうすると、彼は笑う
この笑顔が
好きなんだと思う
自分の気持ちは
分からないままだ
「あんなトコに店あるんだ…てか夏限定とかじゃないの?」
見えて来たのは
小さな小屋
海の家みたい
「…こんちはー。二人なんだけど大丈夫?」
小さな小さな
カフェテラス
すごく落ち着いてて、良い雰囲気
「いらっしゃい。見ての通り満席だよー?」
店主は
眼鏡をかけた、お兄さん
「はいはい、忙しい中ごめんな?俺の大事な奴なんだ。美味いの食わしてな」
カウンター席に座る
良い香が、漂う
和やかな雰囲気に
双眸が、細まる
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