一章の1 庭瀬

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 有名市立十六夜高校。文武両道の校風は県内でもいち押し。多分、定期的な掃除が今の外見を作り出しているんだと思う。壁や硝子は僕の高校より綺麗だった。  ところで、僕が通ってる公立仙北高校は部活推進。将来の医者候補が、美術部で絵を描いていると言うから、親戚は僕の未来を心配しているらしい。  でも、僕は病院を継ぐ気はないんだ。勿論、高校を出たら美術大へ行くつもり。周りは兎も角、母さんは僕の味方をしてくれる筈だ。  裏庭から延びる道を思い切って突っ切り、噴水のある前庭に出る。校舎の入口には鍵が掛かった後で中には入れそうに無い。警備員に見つからない様に、体育館の倉庫らしき建物まで移動する。  校庭から生徒が部活をする声が聞こえる。陸上部とテニス部みたいだ。名門私立十六夜高校の段幕が体育館倉庫から引き返す途中にぶら下がっていた。どうやら、二つは全国大会に出場し優勝するほどの腕前みたいだ。  他にも色々な部活があるようで、部員求む等の貼り紙が、掲示板を埋め尽くしていた。中には、乗馬、華道茶道、弓道部などこの時代にしてみれば古過ぎる伝統行事を扱う部活が多いみたいだった。  ただ、驚くのは、そのいずれもが県大会、全国大会の良い線にいること。
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